2006年06月19日

しあわせ地蔵

 ある日のこと、おばあさんが重い鍬(くわ)で荒地を耕していた。
「ああー、こんきいなあ。掘っても、掘っても石ころばっかだ。開拓なんて、ちっともいいこたあない。この松もしぶといなあ」

 おばあさんは、しっかり根を張った小松を憎らしそうに見ながら、痛む腰をさすった。その時だった。松と松の間に何か光るものが見えた。
「何だやあ? 石みたいだが、こりゃ、大きいぞ!」

 鍬をほっぽり出したおばあさんはびっくりした。
「これは、地蔵さまではないか!」

 頭のあたりは、傷だらけで、顔もちょっと欠けているようだが、石ころではない。木の間からさしこんできた太陽の光を浴びて、ほんのりと温もっていた。
「おじいさん、地蔵さまだあ。うちの畠に地蔵さまが・・・」
「おいおい、だめだぞ。その地蔵にさわっちゃあいかん。たたりがあるで・・・」

 おじいさんは、目の色を変えて言った。
「たたり? 何かあっただかん?」
「ここに開拓が始まったころだがな、苦労続きでたいへんだった。その地蔵はどこから来たのか、大きな松の木の下にいたんだが、その枝を切っただけで、足が動かんくなったり、さわっただけで病気になったり、嫌われもんだっただ」

 おばあさんは、あちこち捨てられて来たと言うお地蔵さまをあわれに思った。
「おじいさん、みんなに相談しとくれん。わしゃあ、きちんと祀ってあげたいやあ」

 おじいさんは、周りの人たちに呼びかけ、何度も寄り合いを重ねた。
「お地蔵さまを粗末にすると、不幸がくるかもしれん」
「二百五十年も前のものだってよ。わしらのこと、何でもご存知だに」
「長い間、苦労してきたで、きっと強いお地蔵さまに違いないだよ」
「どうだん、みんながよく見えるところに移してお祀りせまいか」

 みんなの心が寄せ集まったお地蔵さまは、見晴らしのよい高台に置かれた。赤い帽子と赤い前だれのお地蔵さまも、秋の日を浴びてうれしそうに見えた。

 今日は、お地蔵さまに新しい性(しょう)を入れる日だ。
「夢にお地蔵さまが現れて『ありがとう』って言われたよ。お地蔵さまは、生きておられると思ったよ」
「よかったのん。これで、みんなに幸せがくるぞん。これからは、しあわせ地蔵と呼ぶまいか」

 願いがかなったおばあさんも、腰をのばし、ニコニコ笑っていた。

豊橋・大清水・富士見校区の民話
posted by ハマちゃん at 16:12| Comment(4) | TrackBack(0) | 豊橋の民話集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
これも豊橋南部の民話ですね。

しあわせ地蔵ですか。
どこにあるんだろう。
ネットで調べてみてもわかりませんでした。

「しあわせ地蔵の背景を訪ねて」レポ待ってま〜す。

あと、慣れ親しんだ地元の言葉が出てくるのっていいですね、やっぱり。
Posted by ひとぴん@エクステリア明日香 at 2006年06月20日 10:12
ひとぴん@エクステリア明日香さま
ありがとうございます。

これがですねーー。
私も調べたのですが、背景を訪ねられないのです。

まとめられた方に聞いてみてから、書いてみようかな?
Posted by ハマちゃん at 2006年06月21日 17:37
今日の活動は珍しく車で、東観音寺まで出かけました。
ここには、重要文化財の馬頭観音像もあるそうですが、今日は見ることは出来ませんでした。
立派なお堂がありました。
豊橋にも立派なお寺がありますね。
次回は、浜道にある33観音へ行く予定です。
Posted by mika at 2006年06月23日 22:29
mikaさま
ありがとうございます。

東観音寺も、お寺は行ったことがありますが、馬頭観音は、やはり見たことがありません!
浜道の三十三観音は、初耳です。
(実家から近いのに・・・)

楽しみにしていますので、
また、報告くださいね(^^)
Posted by ハマちゃん at 2006年06月24日 18:30
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