2006年03月24日

知恵地蔵(ちえじぞう)

 昔、前芝村に働き者のばあちゃんがいた。ばあちゃんは若い頃からよく働き、そりゃあみんなが感心していた。

 ある日のこと、ばあちゃんが仕事に出かける途中で小石につまづき転んだので、家にもどり休んでいたが、だんだん痛みがひどくなり、とうとう歩けなくなってしまった。じいちゃんも、子どもたちも心配して、薬草を煎じて飲ませたり、背負って医者につれていったが一向によくならなかった。ばあちゃんは、
「ほんにつらいこと。これじやぁ畑仕事もできやぁせん。わしゃあなんの役にもたたんもんになっちゃったやぁ。ほんに情けない、情けない」と、嘆き悲しんでいた。

 ところが、ある晩のこと、ばあちゃんは不思議な夢をみた。
「深い霧の中から、仏さまが現れてな、わしの目をじっと見て、『知恵地蔵にお参りせよ。そうすればお前は必ず歩けるようになるぞ』とお告げがあったんじゃ。みんなが毎日働いとるのに、わしだけが寝とっちゃすまんでな、わしゃあ藁にもすがりたい思いだて。じいちゃん、すまんが明日、わしを蛤珠寺(こうじゅじ)の知恵地蔵さんところへつれていっておくれんさい」

 次の日、じいちゃんは大八車にばあちゃんを乗せて蛤珠寺につれていった。そこで、ばあちゃんは知恵地蔵さまに手を合わせ、何度も何度も一生懸命お参りをした。

 その次の日の朝、なんだか足が軽くなったような気がしたので、思い切って立ってみると、なんと立ちあがることができた。
「あ、ばあちゃんが立っとるぞ」

 そりゃあ信じられんようなことが本当に起きた。いままで寝たきりだったばあちゃんが、ゆっくり歩きはじめると、みんなは、またびっくりした。なにより、ばあちゃんの喜びようはたいへんなものだった。
「こりゃあ知恵地蔵さんのおかげにちがいない」

 これを聞いた近所の人は、どこかが痛かったり、具合がわるくなると蛤珠寺の知恵地蔵さんにお参りするようになった。噂はどんどん広まり、遠くの方からも蛤珠寺を訪れるようになった。

 いまでは、地蔵さまの名前のとおり、体の具合の悪い人のほかに知恵を授けてもらおうと入学試験や就職試験の合格祈願にくる人たちでにぎわっている。

[注] 知恵地蔵 前芝町蛤珠寺

豊橋・前芝校区の民話
posted by ハマちゃん at 18:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 豊橋の民話集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 地元の民話、歴史を語り継ぐ事は大事だと思います。
 家庭内でも家族の対話に役立ちます。
前芝校区の民話、当地を離れて30数年、聞き忘れかも知れませんが、記憶にありません。参考になり昔を思い起こします。
 寺名を私たちは、「こうしゅあん」と呼んでいました。ご参考まで
Posted by 山口 公志 at 2007年01月22日 15:07
山口さま
コメントありがとうございます。
私も、残せるものを残していきたい気持ちでおります。

>寺名を私たちは、「こうしゅあん」と呼んでいました。

そうでしたか。
民話は、もともと、口伝えられてきたものなので、どこかで変化したのでしょうか?

ありがとうございました。
Posted by ハマちゃん at 2007年01月25日 18:34
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