2006年03月12日

野依八幡社と経本

 ある年のこと、いく日もいく日も大雨が降り続き、とうとう梅田川の堤防を乗り越えて、野依村まで大水が押し寄せて来た。野依八幡社(のよりはちまんしゃ)も、あれよあれよという間に濁流の渦に巻きこまれてしまった。
「八幡社の御神体は流されやせんか、見て来たいのん」
「豊前国(ぶぜんのくに)から分けてもらった神さまだもん、ほっとけんぞん」
氏子たちは、居ても立ってもおられなかった。
「お経本の置いてある蔵の中まで水が入ってきたずらか。そのまんま残っとるとありがたいけれどのん」

 僧侶も心配になり、隣のお寺と連絡を取り合った。水が引きはじめると氏子や僧侶たちは、八幡社へ飛んでいった。ごみや流木をかきわけて蔵にたどりついた時、被害のひどさに驚いた。
「経本が見当たらん。こんなにひどい洪水ははじめてだぞん」
みんなで捜したが経本は見つからなかった。
「昔の洪水じゃあ、寺の桶が芦原新田に流れついたと聞いたぞん」と言う人もいた。

 大洪水の後始末を終えかけたある日、伊勢皇太神宮(いせこうたいじんぐう)の宮司から、
「伊勢の浜辺に打ち寄せられた経本を調べたら、三河国(みかわのくに)野依八幡社蔵所有とわかりました。お困りでしょう。すぐにお届けします」という知らせが入った。伊勢の浜辺の人がこれを見つけ、伊勢神宮に届けてくれたお陰だった。こうして経本は無事に八幡社に戻ってきた。
「経本といい、わしら村の衆といい、昔から伊勢とはご縁が深いぞん。ありがたいことだのう」
村人は、心のそこから手を合わせた。

 その後、「般若経六百巻(教本)が全巻そろっていれば国宝本といわれる」という話が、村人に知られるようになった。経本にくわしい人が、
「中国の本だげなよ。仏教のもとになる教えがつまっておるぞん」
「比叡山栄山寺(ひえいざんえいざんじ)のお坊さんによって伝えられたと聞いとるがのん」
と口々に言った。その話を聞いた村人は、「おらが八幡社はなかなかのもんだ」と思うようになった。しかし、経本は古くなり、使えるものは一冊もなかった。そこで、村人が寄りあって相談し、般若経六百巻を揃えた。

 今では、嵩山寺(すざんじ)と東雲寺(とううんじ)で保管され、毎年、両方のお寺で交互に転読されている。

[注]野依八幡社の御神体 今から約千三百年前に、豊前国(大分県)の宇佐八幡宮(うさはちまんぐう)からわけていただいた御神体を祀っている。

豊橋・野依校区の民話
posted by ハマちゃん at 14:52| Comment(4) | TrackBack(1) | 豊橋の民話集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
野依八幡社の枝垂れ桜は、
いま、ちょい咲きなのですね。

また、お花見に行きたいと思います。
Posted by ハマちゃん at 2006年03月22日 05:55
はあは
Posted by はは at 2006年06月01日 15:30
以前主人と行った時は、もう遅くて散ってしまってたんですが、今年は3/23に行ったら7~8分咲きで、最高でしたよ。
Posted by KIKO at 2006年07月17日 13:29
kikoさま

コメントありがとうございます。
満開一歩手前が、
ほんとうにきれいですね(^^)
Posted by ハマちゃん at 2006年07月17日 18:40
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野依八幡社の枝垂れ桜:ちょい咲き
Excerpt: 先週末にはぽつりぽつりと咲き始めた野依町の枝垂れ桜、どんな案配になっているか、今
Weblog: エクステリア明日香:スタッフルーム
Tracked: 2006-03-21 16:19
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